防衛装備品の輸出「国主導」で推進、国家安保戦略に明記へ…防衛産業の立て直し図る

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 政府は、年末までに改定する国家安全保障戦略に、防衛装備品の海外輸出を「国主導」で推進する方針を明記する調整に入った。政府が外国との受注交渉に全面的に関与し、防衛関連企業への財政支援を導入する方向だ。事実上の企業任せだった手法を転換し、輸出拡充を図る。

 複数の政府関係者が明らかにした。国家安保戦略は外交・安保政策の基本となる文書で、2013年の策定後、初の改定となる。

首相官邸
首相官邸

 自衛隊の航空機や車両などを生産する防衛産業は納入先が防衛省・自衛隊に限られるなど経営に制約が多く、衰退傾向が続く。03年以降、100社超が防衛分野から撤退した。

 有事の継戦能力を維持するには、装備品を生産する防衛産業は欠かせない。このため、政府は自衛隊以外への販路拡大を助け、防衛産業の経営基盤を強化する必要があると判断した。

 装備品の輸出や技術供与は許可制だが、現在、相手国との受注交渉などは主に企業が行っている。官民一体で交渉に臨む外国との競争に敗れることも多く、交渉段階から政府が積極関与することで、官民で売り込む体制を目指す。

 企業への財政支援策としては、相手国の要望に合わせた装備品の改良や仕様変更が必要な際、費用の一部を企業に支援する制度を創設する案が有力だ。売却後も、企業による継続的なメンテナンスと合わせ、装備品の使用について自衛隊による教育・訓練を行うことも検討する。

 政府は14年、装備品輸出を事実上禁じていた「武器輸出3原則」に代わる「防衛装備移転3原則」を決定した。輸出促進を狙ったものだったが、完成品の輸出はフィリピンへの防空レーダー1件しかない。

 3原則の運用指針は、移転する装備品の用途を救難や輸送、警戒監視などに限っている。護衛艦や戦闘機などは輸出できず、輸送機や車両などが想定される。今後、こうした制約の緩和の検討も進める見通しだ。

 米政府は、米企業製の装備品を同盟国などに有償提供する「対外有償軍事援助(FMS)」制度で輸出を増やしている。交渉は政府間で行い、トランプ前米大統領は積極的に「セールス役」を務めた。必要な訓練などもパッケージで提供する。経団連は4月、防衛省に「日本版FMS」の創設検討を要望していた。

 防衛省幹部によると、フランスは東南アジア諸国に戦闘機を売り込む際、民間航空機の直行便を増やすなどの取引を国主導で進める。韓国は移転のための改良研究開発費を支援するなどし、販路を急拡大させた。

 ◆ 防衛装備移転3原則 =防衛装備品の海外移転について〈1〉紛争当事国への移転などの禁止〈2〉平和貢献・国際協力の推進や日本の安全保障に資する場合に限定〈3〉相手国の適正な管理を確保――の三つの原則に基づいて認める政府の方針。「移転」は、物品の輸出や技術の提供を意味する。

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3366586 0 政治 2022/09/25 05:00:00 2022/09/25 05:00:00 2022/09/25 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/09/20220924-OYT1I50160-T.jpg?type=thumbnail
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