【画像を選択すると動画をご覧いただけます】
「核融合」とは、膨大なエネルギーを生み出す太陽の中で起きている反応のことです。物質に高熱を加え融合させて、二酸化炭素や高レベル放射性廃棄物を出さない“夢のエネルギー”を取り出し、発電に利用しようという研究が、いま各国で進められています。
実用化には数十年かかると言われていますが、アメリカをはじめ世界中でスタートアップが誕生していて、開発競争が加速しています。こうしたスタートアップには、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏やChatGPTを手がけるOpenAIのアルトマンCEOが数百億円を投資しているほか、ノーベル物理学賞を受賞した中村修二さんもアメリカで起業しています。
核融合発電で必要となるのがレーザー技術です。その技術を巡り、日本の大阪大学で行われている研究に世界から期待が高まっています。
大阪大学 核融合発電巡り注目
東京・千代田区で3月に開かれた、核融合発電についてのシンポジウム。日米の研究者や、企業・政府関係者が集まりました。
話題を集めたのが、重水素などの燃料にレーザーをあてて過去最大量のエネルギーを発生させたというアメリカの「ローレンス・リバモワ国立研究所」の報告です。
いまこの研究所は、日本の大阪大学に注目しています。
ローレンス・リバモワ国立研究所 ジョン・エドワーズ上級顧問
「日本では大阪大学が過去10年間、先駆的に(研究を)推進してきた。とても重要なことだと考えている」
1秒間に100回照射 レーザー技術を開発中
大阪府吹田市にある大阪大学のレーザー科学研究所を訪ね、世界から注目されているレーザー技術の装置の一部(開発中)を特別に見せてもらいました。
この装置は、非常に早い繰り返しで強いエネルギーのレーザーを発射することができるといいます。
従来は、燃料を高出力のレーザーで撃ちエネルギーを発生させていました。しかしレーザーの冷却や燃料の取り換えに時間がかかり、1日に数回しか照射できないのが課題でした。
一方この研究所で開発中の技術は、特殊な冷却装置を用いることで照射の数を1秒間に100回と大幅に増加させることに成功しました。またレーザーと同時に燃料も射出することで、エネルギーを継続的に生み出す仕組みです。
大阪大学 レーザー科学研究所 兒玉了祐 所長
「瞬間的に起こる現象を繰り返し起こさないと、エネルギーとして取り出し使うことができない。世界ではまだ誰もできていなかった1秒間に100回で、ある程度のエネルギーが出るということができるようになった」
大学発スタートアップも立ち上げ
将来のビジネス展開を見据えた動きも起きています。研究者が大阪大学発のスタートアップ企業を立ち上げました。
レーザー技術を支える部品の開発など大学だけでは手が回らない業務を担う目的でつくられ、投資家などから20億円の資金を集めています。
レーザーに合わせて燃料を射出する装置は、1秒間に100回という高速での射出をどう実現するか、大学と連携して開発を進めています。
エネルギー輸出国へ “日本の悲願”なるか
このスタートアップのCEOの松尾一輝さんは、国内の研究所や企業の間に、サプライチェーンや協力体制をいち早く構築していきたいと考えています。
大阪大学発のスタートアップ 松尾一輝CEO
「国内で理想的に(仕組みを)つくることができれば、国内の規格が世界のスタンダードになる。そういったところも加速できるといい」
大阪大学 レーザー科学研究所 兒玉所長
「日本がこれからチャレンジできるかどうか。“日本の悲願”というか、エネルギー輸出国になってほしい」
日本では3月末にも業界団体が発足する予定で、政府も後押ししていく計画です。
(経済番組 松村亮)
【2024年3月22日放送】
あわせて読みたい