IHIのグループ会社である株式会社IHI原動機は、日本郵船が新来島どっくに発注した、最新鋭の環境対応型自動車運搬船(PCC)に搭載される主機として、8X52DFデュアルフューエルエンジンを受注した。今回受注した8X52DFは日本国内の造船所向けとして初めてのX-DFデュアルフューエルエンジン。
2020年から船舶の排ガス規制が強化される中、船舶用燃料は従来の石油系燃料から硫黄酸化物(SOx)の排出がほぼゼロとなる、環境負荷が低いクリーンなLNG燃料船の導入が韓国や中国で積極的に取り組まれ始めている。これに加え、2025年以降の建造船に課される「EEDI(Energy Efficiency Design Index=エネルギー効率設計指標)30%削減の達成」のため、CO2排出量が少ないLNG燃料船の開発が各造船所において進んでいる。
このように、今後数年間でLNG燃料船は世界的に拡大することが見込まれている中、日本でも環境省及び国土交通省がCO2排出削減対策としてLNG燃料船の導入促進に向けた取り組みを積極的に行っている。こうした中、日本郵船は中期経営計画「Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green」の一環としてLNG燃料船への転換に取り組んでおり、今回の環境対応型自動車運搬船が日本で建造する最初の大型LNG燃料船となる。
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X-DFデュアルフューエルエンジンは、低圧ガス噴射方式を採用することで、安全性が高いことに加え、かつLNG燃料供給設備のコストを抑えられる、また、排出規制海域(ECA)内外問わず、機関単独でIMO(国際海事機関)の窒素酸化物(NOx)3次規制をクリアできるなど、優れた環境性能を有していることが大きな特長。そのことから、世界の大型ガスエンジンにおけるX-DFのシェアは、最近では90%(12ケ月累積受注ベース)にものぼり、その技術は世界でも高く評価されている。
IHS原動機は、燃料として重油および天然ガスの両方を使用できる低速2ストロークのX-DF形デュアルフューエルエンジンを、IHI、Winterthur Gas & DieselおよびIHS原動機の3社で共同開発し、製造している。中口径のRT-flex50DFエンジン(シリンダーボア50センチ)は、2015年に国内で初めて製造し、出荷した。 また、世界最大となるW6X72DF形フルスケールテストエンジン(シリンダーボア72センチ)を同社相生事業所に設置し、低速2ストロークエンジンでは難しいとされていた予混合・希薄燃焼技術を大口径エンジンで実証した。
IHI原動機が製造・販売するX-DFデュアルフューエルエンジンは、IHIグループの環境配慮製品(省エネ、温室効果ガス削減、省資源、環境リスク低減、生物多様性保全の5項目にて評価し、一定の水準を満たすIHIグループの製品・サービス)にも認定されている。
予混合・希薄燃焼式「X-DFエンジン」の特長
低速2ストロークのデュアルフューエルエンジン“X-DF”の特長は次のとおり。
■ 予混合・希薄燃焼方式を採用し、SCR(選択触媒還元)やEGR(排気再循環)等のような排ガス削減装置なしで、IMO NOx 3次規制をクリア
■ 高圧コンプレッサー、高圧液体ポンプを必要としないシンプルなプラント構成を実現し、初期投資費用や運航費を抑制
■ 低い圧力(1.6Mpa以下)の燃料ガス(LNG)を利用した高い安全性を構築
■ ガスモードからディーゼルモードへ瞬時に切り替え可能
■ 大型舶用主機として実績のある低速2ストロークエンジンでの実現
予混合・希薄燃焼式「X-DFエンジン」の効果
ディーゼルエンジン(拡散燃焼)は、理論混合比領域(上図のオレンジ色の領域)での燃焼となるため、NOxが大量に発生する。一方、IHS原動機が取り組むガスエンジンは、予混合による希薄燃焼。希薄燃焼は、希薄限界領域(左図の緑色の領域)での燃焼が可能であるため、大幅にNOx排出量を削減することができる。
予混合・希薄燃焼は、天然ガスと空気を予め均一に混ぜることにより、天然ガスの濃度のムラをなくす。また同時に混合する天然ガスの割合をできるだけ希薄にすることにより、燃焼室内は低く均一な温度分布が得られ、大幅にNOxの排出量を削減することができる。
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