NTT東日本ら、養殖漁場のデータを可視化する実証実験を開始

大場みのり (編集部)

2019-06-26 13:21

 NTT東日本 福島支店は6月26日、同県の内水面水産試験場、福島大学、ビーマップと連携し、IoTを活用して養殖漁場の環境データを可視化する実証実験を開始すると発表した。鯉の養殖事業において、県南鯉養殖漁業協同組合と郡山市が抱える課題の解決を推進することが狙いだ。NTT東日本が漁業分野でIoTを活用した取り組みを実施するのは初めてとなる。

 鯉は長年、福島県郡山市の特産品の一つだったが、現在養殖事業に取り組んでいる生産者6人の高齢化に伴い、養殖場事業の生産性向上や後継者の育成、適切な環境管理による鯉のへい死(突然死)抑制が必要とされているという。

 そこで4者は、生産性向上や巡回業務の支援、養殖管理基礎データの蓄積、鯉のへい死防止などに向けて、以下の検証を行う。なお、携帯電話の電波が届かない農村エリアなどでも長距離から1Gbps以上の高速無線通信が実現するよう、マイクロ波と同様に強い直進性があるミリ波を利用した通信環境が構築された。

実証実験イメージ(出典:NTT東日本 福島支店、県南養殖漁業組合、郡山市、福島県内水面水産試験場、福島大学、ビーマップ)
実証実験イメージ(出典:NTT東日本 福島支店、県南養殖漁業組合、郡山市、福島県内水面水産試験場、福島大学、ビーマップ)

1.養殖管理基礎データの蓄積

IoTセンサーを養殖場に設置して、水温、溶存酸素、pH(水素イオン指数)、酸化還元などの養殖環境データを取得し、クラウド上に蓄積する。データの推移を観察して養殖方法の見直しを検討したり、養殖環境データと作業の実施状況の相関関係を養殖漁業従事者と共有したりする。

2.異常検知時のアラート通知

養殖環境データをリアルタイムで把握し、酸素濃度や水温の異常を検知した際はアラート通知を行うことで、養殖場の経済的損失にもつながる鯉のへい死や、鯉ヘルペスを防止する。

3.ネットワークカメラによる遠隔監視

遠隔操作で撮影画角の調整が可能なネットワークカメラを養殖場に設置し、離れた場所から鯉の状態を確認して巡回稼働の削減を図るとともに、へい死防止の効果を検証する。

 役割に関しては、県南鯉養殖漁業協同組合が養殖場の提供、養殖事業の実施、養殖マニュアルの作成、郡山市が定例会の開催などプロジェクトの実行管理や宣伝活動、福島県内水面水産試験場が養殖環境の改善提言、養殖技術指導、福島大学が取得データの解析、養殖環境の改善の提言、ビーマップがミリ波による長距離無線通信環境の構築、環境可視化用センサーの技術支援、NTT東日本がIoTを活用した事業提案、データ収集、IoTセンサーとネットワークカメラの提供を担当する。

 実証実験期間は、2019年6月26日から2022年3月31日までを予定している。今後は、この実証実験を起点として、県内の自治体や一次産業従事者とともに、福島県におけるスマート技術の活用、普及に貢献していくという。

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