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円が対ドルで155円30銭台、34年ぶり-介入警戒レベルに到達

更新日時
  • 為替介入の環境整ったと捉えられてもいい、鈴木財務相が23日発言
  • 「介入リスク、依然高い」-BBHの市場戦略グローバル責任者

24日の外国為替市場では円相場が1ドル=155円台に下落し、約34年ぶりの安値を更新した。米国の利下げ観測が後退する中、日米金利差に着目した円売り・ドル買いが優勢で、日本の通貨当局が円買い介入に踏み切ると警戒される節目の水準に達した。

  円は下げ幅を広げて一時155円37銭と、1990年6月以来の安値を付けた。中東情勢緊迫化への不安が和らぎ、投資家のリスク許容度が改善したことが、低金利の円を売り高金利通貨を買う円キャリートレードを促している。

  ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)の市場戦略担当グローバル・ヘッドを務めるウィン・シン氏は「水準に関係なく、介入リスクは依然高い」と述べた。

 

ドル・円の推移と介入実績
 
 

  米国ではインフレの再燃が警戒され、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が利下げ開始を先延ばしする可能性を示唆。金利スワップ市場が見込む年内の利下げは2回以下に低下している。一方、日本銀行は今週の金融政策決定会合で政策金利を据え置く見込み。植田和男総裁は19日、緩和的な金融環境が当面続くとの見通しを改めて示した。高水準の日米金利差が維持され、円売りに歯止めがかからない。

緩和的な金融環境は当面継続、国債買い入れはいずれ減額へ-日銀総裁

  イランとイスラエルの対立激化がひとまず回避されていることも、金利差収益を狙った円キャリートレードを手がけやすくしている。一方で、中東リスクはくすぶっており、事態が悪化した場合は逃避需要からドル高が進みやすく、エネルギー供給の大半を輸入に頼る日本の円にとっては、原油高が貿易収支の悪化を通じて円安圧力を強めかねない。

原油高騰は円安を加速する弱点、貿易赤字と米利下げ後退のスパイラル

  鈴木俊一財務相は23日午前、参院財政金融委員会で為替介入に関して国際的に容認する雰囲気が進んでいるのではと指摘され、「この先の適切な対応が何かとは申し上げないが、そうしたことにつながる環境が整ったのかということについてはそう捉えられてもいい」と述べた。

環境整ったと捉えられてもいい-為替介入について問われ鈴木財務相

  鈴木財務相とイエレン米財務長官、韓国の崔相穆経済副首相兼企画財政相は17日に米ワシントンで会談し、通貨安を巡る日本と韓国の深刻な懸念を認識しつつ「為替市場の動向に関して引き続き緊密に協議する」との共同声明を発表。同日の主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、為替の過度な変動は経済に悪影響を与えるとしたコミットメントを共同声明で再確認した。市場ではいつ為替介入が実施されてもおかしくないとの警戒感が高まっている。

  インタッチ・キャピタル・マーケッツのシニア為替アナリスト、ピョートル・マティス氏は「為替介入よりも、予想外の利上げの方がはるかに理にかなうだろう」との見解を示した。利上げの可能性は低いと同氏もみているが、「円安を落ち着かせる最も効率的な方法は、利上げで市場を驚かせることだ」と指摘した。

  一方、ラボバンクの為替戦略責任者、ジェーン・フォーリー氏は「日銀が26日の政策会合後に何らかのタカ派的な発言をしてくれることを財務省は恐らく望むだろうが、同日のその後で発表される米個人消費支出(PCE)価格指数が強い内容であれば、ドル高を強めることになるだろう」と語った。

 

(相場を更新します)
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