4万円突破に米有力紙が大激怒「日経平均は欠陥のある指標だ」ユニクロがトヨタの10倍の影響力行使“日本株はまだ市場最高値を更新していない”

 日本の株式市場の代表的な株価指数「日経平均株価」。経済の動向を知ることができる重要なデータとして、市場でひときわ存在感を放っている。だが一部では「ユニクロ指数」と揶揄されることもある。経済誌プレジデントの編集長だった小倉健一氏が、その理由を解説する――。

目次

ファーストリテイリングは日経平均に最も大きな影響を与える会社

「ユニクロ」を展開しているファーストリテイリングが、日本の株式市場で“特別な存在”であることをご存知だろうか。日本を代表する会社であることはもちろん、私たちの想像以上に日経平均株価に大きな影響を与えている。

「日経平均株価」とは、日本経済新聞社が選んだ225の会社の株価を基に計算される数値で、将来の景気を予測する手がかりとされている。ただし、この指数は、株価が高い会社の影響を受けやすいという特徴がある。その中で、ファーストリテイリングは日経平均に最も大きな影響を与える会社であり、その影響力は全体の約10%にも及んでいる。

 ニッセイアセットマネジメントによれば、2023年5月末時点での日経平均の構成比率上位銘柄は以下だ。

順位 銘柄 業種 比率
1位 ファーストリテイリング 小売業 10.8%
2位 東京エレクトロン 電気機器 6.4%
3位 アドバンテスト 電気機器 3.9%
4位 ソフトバンクグループ 情報・通信業 3.6%
5位 ダイキン工業 機械 2.9%
6位 KDDI 情報・通信業 2.8%
7位 ファナック 電気機器 2.6%
8位 信越化学工業 化学 2.4%
9位 テルモ 精密機器 1.9%
10位 TDK 電気機器 1.8%

 上記のランキングに、読者は違和感を持たないだろうか。トヨタ自動車(1.4%)もなく、三菱UFJ銀行も、ソニーも、任天堂も、総合商社にいたっては一つもない。日本企業の時価総額ランキングでは7位のファーストリテイリングだけがひたすら影響力が強い状態になってしまっている。

日経平均が“ユニクロ平均”な日もある

 ファーストリテイリングの業績は、日経平均の動向をうらなう意味でも大きな影響を持っている。同社がアナリストの予想を上回る好業績を発表すれば、次の日の日経平均が上がることがよくある。ただし、良いニュースが出た時にアメリカの株式市場が大きく下落するなど外部の影響があると、市場全体の動きに引きずられることがある。これは、ファーストリテイリングの影響力が非常に大きいために起こる現象だ。このような日経平均との関連性は、株を持っている人だけでなく、ETFや日経平均先物を取引する人にとっても把握しておくべき重要な情報である。

 少々過去の事例ではあるが、アベノミクスの開始時には、日経平均とファーストリテイリングの両者はともに価格が上昇したが、中国の経済ショックにより、ファーストリテイリングの価格が強く下落したことがあり、それに引きずられる形で日経平均に影響を与えたことがあった。ファーストリテイリングの業績は日経平均の動きに影響を与えるため、投資家はこの関係性を把握しておくことが重要であるということだ。

 エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)氏は、AERAdot.(3月4日)で

<実は、日経平均は玄人の投資家から「ユニクロ平均」「半導体平均」と揶揄されることがあります>
<日本の株式市場全体では沈んでいる株価が多くても、世界中でユニクロを運営するファーストリテイリング社の株価が上がれば日経平均が上昇するなんてこともあり、まさに日経平均がユニクロ平均な日もあります>
<日本を代表するトヨタ自動車の株価が大きく動いても、それほど日経平均は激しい動きをしません>

 と指摘している。米ウォール・ストリートジャーナル紙(2月22日)も「日経平均」について大きな批判を行っている。

<日経平均株価は1989年の最高値を更新し、日本の株主にとって34年間続いた空白の期間に終止符を打った。これは喜ばしいことであると同時に、日米双方の株式投資を理解する上で深い欠陥でもある>
<あまり目立たないが、より重要なのは、ヘッドライン・インデックスの数値は長期的にはあまり重要ではないということだ。日経平均株価はダウ平均株価と同様、市場を計るには最悪だ。指数の数字には、投資家が受け取る配当金は含まれていない。インフレの影響も考慮されていない。また、史上最大のバブルのピークからのリターンを測定しても、将来についてはほとんどわからない>

「ダウ工業平均」という時代錯誤の指標

 少し、ダウ平均についても補足をしておきたい。米ウォール・ストリートジャーナル紙の他記事(2017年1月25日「We’re Already at Dow 30000, You Just Don’t Know It /The blue-chip index is a poor measure of what investors are doing」)では、ダウ工業平均(Dow Jones Industrial Average)がもはや時代錯誤の指標だと厳しい批判がなされている。ダウ工業平均は、アメリカの代表的な株価指数の一つで、30の大手工業企業の株価を平均したものだ。1896年に設立され、アメリカの株式市場の動向を示す重要な指標の一つとされている。

<ダウを捨てる時が来た。120年を経て、由緒あるダウ工業株30種平均は恥ずべき時代錯誤となり、専門家からは見放され、ほとんど何も知らないメディアにのみ愛されている。ダウ平均は更新されるか、あるいはいっそのこと取って代わられる必要がある>という。

 ダウ工業平均は、わずか30社で構成されていること、市場の動向と大きく乖離していること、計算の仕組みが価値の低い企業の排除ができていないという欠点がある。指標として扱われてきた期間が長いためにシンボルとなってしまったが、だんだん投資家から相手にされなくなってしまったという。

海外投資家はTOPIXを重要視

 米ウォール・ストリートジャーナル紙のはじめの記事に戻ろう。そんな落ちぶれた指標「ダウ工業平均」と比較して「日経平均は広く取引されている」と指摘する。

<ダウと違って日経平均は本当に重要なのだ。日経平均を基にした先物取引は、証券取引所が作成する優れた指標であるTOPIXを基にした先物取引よりもはるかに広く取引されている。その結果、莫大な資金が、企業間の資本配分の決定に役立たないものを基準に動いている。/日経平均の代わりにTOPIXを使えば、株価は1989年12月のピークからまだ8%以上低い。高値更新は時期尚早ということだ>

 海外と日本の投資家が重視する指数が異なるため、日経平均が市場全体を正確に反映していないと考える人は多い。海外投資家はTOPIXを、国内投資家は日経平均を重視する傾向がある。

日経平均もダウ工業平均のように落ち目に?

 日経平均とは別にTOPIXの使用を考えると、配当の重要性が浮き彫りになる。日経平均は、配当を含んでいない。他方、TOPIXは配当(2022年度年間収益率5.81%)を含んでいる。米ウォール・ストリートジャーナル紙によれば、<バブルの頂点で買い、配当を再投資するという悲惨な決断をした投資家は、2021年3月までにすべての損失を取り戻した>という。つまり、もっとも不運な投資家であっても3年前には、損失を取り戻したわけであるが、日経平均にはそれが反映されていないことになる。

 日経新聞社の立場に立っても、有名になりすぎてしまった日経平均が、いまさら計算方法を変えることはできないだろう。もうしばらくの間、日本で最も主要な指標としての活躍をするのかもしれないし、ダウ工業平均のように、落ち目になっていくかもわからない。

 大事なことは、私たちの国、日本の本当の変化に目を向けることだろう。政府債務は依然として異常に高く、政府が無能な支出を増大させながらも、必死で民間企業は成長し、東京証券取引所の主導する改革は成功しているように見える。実力を表していない疑いの強い日経平均ではなく、TOPIXでの過去最高値更新も近い。

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