【日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一】日電産(6594)は21日、2021年4~6月期の連結決算(国際会計基準)を発表した。市場予想を上回る好決算にもかかわらず、先行きの業績見通しを変えなかったことで、発表後の私設取引ではやや売りが優勢となっている。ただ、半導体不足の解消で車載向けモーターの需要拡大を見込む声もあり、下げれば買いたい投資家は少なくなさそうだ。
■予想は慎重なのか
日電産の4~6月期の連結売上高は前年同期比33%増の4474億円だった。アナリスト予想のQUICKコンセンサスの4133億円(7月20日時点、10社)を上回った。営業利益も60%増の445億円と、QUICKコンセンサスの411億円(同、11社)を超えた。
実績値がマーケットの期待を超えても、投資家の最初の反応は売りだ。21日午後の私設取引システム(PTS)で下落。ジャパンネクスト証券が運営するPTSで、同日の東証終値(1万3000円)を400円(3.1%)下回る1万2600円を付ける場面があった。
市場では「高い進捗率にもかかわらず、業績予想を上方修正しなかったため、先行きに慎重ととらえられたのではないか」(国内証券)との声が聞かれた。4~6月期の営業利益は4~9月期の計画の56%を達成している。
※日電産の業績推移(22年3月期は会社予想)
■出荷拡大への期待
4~6月期の決算について、岩井コスモ証券の斎藤和嘉シニアアナリストは「直前の1~3月期と比べると車載向けが落ち込んでいるが、家電や機械装置向けが補い、想定以上に良い内容だった」と指摘。「車載向け半導体不足の解消で、車載向けモーターの需要も回復していくだろう」とみる。
日電産の決算発表前に、ゴールドマン・サックス証券は21日付のリポートで「4~6月期の業績こそ半導体不足の影響、材料費上昇などから会社計画線に沿った営業利益と推測するが、逆に7~9月期以降は顧客の生産回復が進み、年内のどの時点かで急速に出荷が拡大し、業績にレバレッジがかかる可能性がある」と指摘していた。
日電産は業績見通しを変えなかったが、市場が抱く業績拡大の期待は依然として大きいようだ。