東京電力・福島第1原発の処理水の海洋放出に伴い、中国が日本からの水産物の輸入を全面的に停止しました。この影響は広がりをみせていて、特に水産業界から悲鳴の声があがっています。

投資24億円…輸出拡大視野に新工場の建設に着手した矢先

中国への水産物の輸出はここ数年で一気に拡大しています。大分県内では2019年度、3500万円だった輸出額が、わずか3年で2億円に達しています。輸出で大きなシェアを占めているのは養殖クロマグロ。全体の75%に上る年間1億5000万円の取引がありました。

兵殖 中迫猛社長:
「どんどん出荷するはずだったものが余っていくわけで、余った魚をどうするんだとなると今の時点では手の打ちようがない」

津久見市で養殖業を手がけている「兵殖」では3年ほど前から中国向けにクロマグロの輸出を開始。右肩上がりで需要が伸び、国内向けを上回る勢いでしたが、7月10日から注文がストップしています。養殖ブリの輸出も拡大していた矢先でした。

兵殖 中迫猛社長:
「ブリは売れるサイズが決まっているので売れないからとずっと置いておくわけにはいかない。生産コストが下がらない中で相場が下がるとダメージが大きい」

今後30年続くとされる処理水の放出。反対の姿勢を示してきた県漁協では、影響の拡大や長期化を懸念しています。

県漁業共同組合 中根隆文組合長:
「風評被害は絶対的に心配です。漁業、水産業は孫の代まで盛んであるべきだし我々もそれを願っているので」

県漁協では中国への輸出拡大を視野に入れ、養殖ブリの新たな加工場の建設に着手したばかりでした。およそ24億円をかけた大型投資は先行き不透明となっています。

県漁業共同組合 中根隆文組合長:
「処理水の放出で今、中国とはなかなか前向きな話しができない。他の国に輸出するというのが一番いいが、実際に今から探すとなるとここ1年でできるわけではない」