明日の株式相場に向けて=インドを舞台に雄飛する自動車関連

市況
2023年7月5日 17時00分

きょう(5日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比83円安の3万3338円と続落。朝方は400円安に届きそうな勢いで水準を切り下げ3万3000円大台攻防の様相をみせたが、売り一巡後は急速に下げ渋る展開となった。

個別株を追うと 自動車周辺の“低PBR株”が引き続き強い。前日紹介した大同メタル工業<7245>は値ごろ感と0.4倍台の低PBRが利いて一気に頭角を現してきた。同社は今の低PBR改善に向けた方策として“成長投資”に注力する意向にあり、まずは「欧州の洋上風力発電などで使われる軸受けメタルの製造拠点確立に資金を充てる」(会社側)という。自動車向け以外の需要が獲得できる場所を確保できれば、新たな成長シナリオも描ける。

ともあれ、半導体不足の解消に伴う自動車生産の回復シナリオは、その周辺企業にも福音となっていることは確かであり、低PBR物色人気と共鳴して波状的に資金を誘導している。株式市場でも、これまでPBRが1倍を大きく下回る銘柄は人気薄の象徴でもあったが、今は全体相場の水位が上がってきた関係で、下値に対するリスクヘッジの意味合いも含めてこうした銘柄群は買いやすいという思惑につながっている。関連銘柄の裾野は広いが、ここからマークしておきたい好チャート銘柄としてはミツバ<7280>、共和レザー<3553>、田中精密工業<7218>、プレス工業<7246>などが挙げられる。

そして、風向きが順風に変わった自動車部品と低PBR株の逆襲トレンド、これにもう一つファクターを加えるとすれば、キーワードとして浮上してくるのは「インド」である。これは、米国が腐心する対中シフトとも密接に関わる。米中の覇権争いが先鋭化するなか、米国は日本を対中包囲の要衝として引き上げた。俎上に載せて検討するなどという時間的なラグを一切挟まず、国費を惜しまず投入する大規模半導体工場やバイオ工場は米国の意思が強く反映されている。これは、中国デカップリングに本腰を入れるひとつの号砲ともなり得るものだ。かつて日本が凋落した1990年以降のバブル崩壊から、デフレの深淵に陥ったプロセスを想起させる形で中国経済の弱体化が進む。とするならば、経済的に優位性を発揮するのは世界一の人口大国であるインドということになる。株式市場でも米中冷戦という政治的背景がカタリストとなって、インド関連は折に触れテーマ物色対象としてスポットライトを浴びる頻度が高まることになる。

いうまでもなく、世界で400兆円を超える巨大マーケットを形成する自動車産業はインド関連の急先鋒だ。自動車メーカーやその周辺企業はインドの経済成長をいかに商機として捉えていくかが重要なテーゼとなる。そして、今の相場で明らかとなってきた地殻変動ともいえる自動車周辺株への投資資金の流れは、インドというフィルターをかけて眺めると、新たな観点で有望株が炙り出されてくる。

今週に入って株価を急動意させたミクニ<7247>はインドでの展開に傾注している。足もとは目先筋の売りで上値が重くなっているが、依然としてPBRが0.5倍台で配当利回りも3.8%近くあり、株価の水準訂正レベルとしてはまだ5合目という感触だ。このほか、自動車周辺企業でインドに照準を合わせている銘柄では三櫻工業<6584>が挙げられる。業績は24年3月期営業利益が前期比3倍となる40億円を見込んでいる。なお、PBRは0.8倍台だが、同社の場合、PBR1倍台クリアは4ケタ大台回復とほぼ同義となり、当面の目標として分かりやすいメルクマールとなる。このほか、ホンダ系自動車部品会社で、自動車のアンダーボディ骨格部品を手掛けるエイチワン<5989>はEV向け受注が拡大中。業績も24年3月期は急改善し、営業損益が30億円の黒字化を見込む。赤字転落時もしっかりと配当を維持するなど財務体質は強固でPBRは0.3倍にようやく乗せてきたところである。

あすのスケジュールでは、6月の輸入車販売、6月の車名別新車販売、6月の軽自動車販売、6月のオフィス空室率などが発表される。また、午前中に30年物国債の入札も予定されている。海外では、5月の豪貿易収支、マレーシア中銀、ポーランド中銀の金融政策発表、5月のユーロ圏小売売上高のほか、6月のADP全米雇用リポート、6月の米ISM非製造業景況感指数などにマーケットの関心が高い。このほか、5月の米貿易収支、週間の米新規失業保険申請件数などが注目される。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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