「攻めの人事」実現へ、デロイト×SAP特別対談 人的資本の概念で、人事の役割はどう変わる?

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企業価値を左右する人的資本。「ヒト」という無形資産に機関投資家の関心が集まる今、日本企業の人事部門は岐路に立たされている。従業員エンゲージメント向上に寄与する施策の立案、ビジネスの成果に貢献するタレントマネジメントなど、人事に求められる役割は管理を超えて戦略へと拡張し、経営への影響力を強めている。変革が求められている人事部門に対し、伴走しているのが、デロイト トーマツ コンサルティング(以下、DTC)だ。DTCは、さまざまな人事課題に対してテクノロジー・データの利活用を通じた変革を推進する企業を支援するため、テクノロジーパートナーとのアライアンスを強化しながらグローバルでサービスを展開している。これからの人事部門に必要なこととは何か。人材マネジメントに詳しい、DTC執行役員の濱浦健一郎氏と、SAPジャパン(以下、SAP)バイスプレジデント、森太郎氏の対談から探る。

変わる人事部門。経営とのつながりが強まる

――日本企業の人事領域に関するトレンドについて教えてください。

濱浦 これまで人事部門は、管理の比重が大部分を占めていました。給与計算や勤怠管理はもとより、企業の全体最適を求めた人材のローテーションや配置調整などのオペレーショナルな業務をいかに効率化していくかが主な命題でした。それが今、経営資源における人材の重要度が改めて高まる中で変わりつつあり、人事部門に「この事業にはこういう人材が必要なのでは?」といった「攻めの提案」を要望する声が強まっています。つまり、経営とのつながりが濃くなってきています。

濱浦 健一郎
デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員
SAP SuccessFactorsビジネスをリード。人材マネジメントの効率化・高度化に向けた人事戦略策定・タレントマネジメント構想策定から人事業務改革、HRIS導入・運用まで、HR Technologyに係る一連のコンサルティングに従事。グループ・グローバルレベルのHRIS導入プロジェクトマネジメントの豊富な実績を有する

 企業の4大経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の中で、日本企業はITシステムの導入など情報の部分を優先させてきました。ヒトは後回しになりがちでしたが、ここ3、4年で「人的資本経営」が注目されるようになり、「企業価値創出の原動力はヒトである」という認識が拡大しました。さらに、働き方やビジネスが大きく変容したことも相まって、従業員一人ひとりの自律的な働き方の実現に乗り出す企業が増加。従業員が置かれている状況や気持ちに寄り添いながらマネジメントをする重要性が高まってきました。

――人事部門の機能が拡張する中で、人事システムはどのように構想するべきでしょうか?

濱浦 これまでは、労務管理や給与計算を効率化するシステムを管理することで事足りましたが、近年では人材採用から配置、育成などのタレントマネジメントに加え、従業員エンゲージメントなどの領域までを人事が網羅的に担っていくことが求められてきています。1つのシステムにすべての機能を詰め込むのではなく、最適な製品を選定して組み合わせながら、人事がカバーする領域をどのようにシステム化していくかが肝になるでしょう。

 当社が提供しているクラウド人事システム「SAP SuccessFactors」は、今の人事部門に求められる機能を網羅しています。ただ、使いこなすには世界を牽引している企業の事例から最良の方法論を学び、人事システムを新しく設計することが有効だと考えています。

森 太郎
SAPジャパン バイスプレジデント 人事・人財ソリューション事業本部 本部長
国内SIer、外資系ソフトウエアを経て、2011年SuccessFactors Japanに入社、日本の市場開拓より当ビジネスに参加。SAPと統合後も、非製造系の営業部長として金融、運輸、消費財、サービスなど多様な業態のお客様にSAP SuccessFactorsを用いた人事変革を提案。2022年4月より、バイスプレジデント事業本部長として人事クラウド事業の統括責任者を務める

企業ごとに異なる、人事部門刷新の策

――人事部門の戦略的価値を高めるうえで、SAP SuccessFactorsはどのような価値を提供できますか?

 SAP SuccessFactorsは、包括的な人事機能により人事部門の刷新を可能にします。機能の特徴は、大きく3つに分類できます。

1つ目は「アプリケーション」。給与や勤怠、福利厚生といった基幹システムに加えて、採用、目標設定、教育、配置、従業員エンゲージメントまで幅広いモジュールを用意しています。

2つ目は「オペレーション」です。新機能を年2回リリースし、自動アップデートしていますので、グローバルの新しいトレンドも踏まえた機能を提供するとともに、つねに最新の状態が維持されます。

濱浦 その観点ではとくに、日本特有の業務プロセスに合った機能調整も欠かさず行われていることが強みだと思います。

 はい。3つ目は「エコシステム」です。導入を支援するパートナー、例えば、DTCのコンサルティングやナレッジはもちろん、SAP SuccessFactorsでは備えていないがニーズの強い、文書管理や電子署名といった製品もこのエコシステムから提供しています。この幅広いエコシステムが、企業ごとに適した人事部門の変革を後押しします。

濱浦 トータルソリューションとしての完成度が高いと感じます。各社固有の要件を受け入れられて、しかも排他的ではない柔軟な仕組みを構築しやすいソリューションなので、人事機能の高度化を迅速に、かつ高品質で成し遂げられます。

また、必要な機能から段階的に導入できるところも魅力ではないでしょうか。幅広いモジュールの中から、優先度をつけて段階的に拡張させていくアプローチが取れるので、導入期間の短縮、クイックウィンにもつながります。

SAP×DTCで人事部門の変革を強力に支える

――SAPとDTCのシナジーが企業にもたらす価値とは、どんなことでしょうか。

濱浦 SAP SuccessFactorsはすばらしい機能を有していますが、うまく使いきれないと、効果も中途半端になってしまいます。この効果を最大化するためには、単純にシステムを導入するだけではなく、システム構想・業務設計・システム導入・維持運用・チェンジマネジメントを通じたシステムの浸透まで整合性を持って進めていくことが重要であり、当社はこれらをワンストップで支援することができます。また、当社は、グローバルで蓄積した知見を基に伴走型のコンサルティングをできることがいちばんの強みです。日本企業が目指す人材マネジメントの実現に向けて、ITやテクノロジーに精通したコンサルタントのみならず、人材マネジメントの各領域の専門家も交えて、ナレッジを集約させて人事部門の変革を後押ししています。

 私が思うDTCの強みは、世界各地に在籍しているシステム系と業務系の優秀なコンサルタントが、グローバルでチームを組成してプロジェクトに取り組む点です。そのチームが日本企業の現状に歩み寄り、課題を明らかにして、大きな目標に向けて地に足の着いたプロジェクトを推進されている印象です。日本企業の人事部門にはまだ、将来のビジョンやあるべき姿を語れる人はそう多くありません。DTCのように人事部門の中に入り込み、力強く変革を推進していく存在が重要ではないでしょうか。

濱浦 当社には、SAP SuccessFactorsのエキスパートだけでも日本に100名近く在籍しており、日本最大級の規模となっています。また、単なるシステムの構築にとどまらず、業務設計から実行まで一連の流れを支援するノウハウを持ち、国や言語の垣根なく、ソリューションを提供しています。両社のシナジーで、多様化かつ複雑化が進む人事部門を戦略部門として起動させることができると確信しています。

 日本企業の成長が停滞する今、グローバルな競争優位性を高めるためにも、人事部門の変革を起点に、働く人たちを元気にしたいという思いから、ソリューションを展開しています。そのためにも、単なるオペレーション管理ではなく、タレントマネジメントは不可欠でしょう。企業の成長のみならず、日本経済の行く末は人事部門に委ねられていると言っても過言ではありません。DTCとの協業によって、優秀な人材の確保や育成、従業員エンゲージメントの強化まで、多面的にサポートしていきたいと思っています。

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