コンテンツにスキップする
Subscriber Only

バフェット保有の商社株、1年間の含み益2000億円超-なお追加の公算

米著名投資家ウオーレン・バフェット氏が率いる米バークシャー・ハサウェイが日本の5大総合商社の株保有を公表してから1年がたった。新型コロナウイルス感染対策では海外に後れを取った日本だが、これら商社の株価上昇率は20~50%程度と好調で、含み益は2000億円を超えた。バークシャーは公表時に株価次第で保有比率を高める可能性を示唆していただけに、依然として割安感のある商社株には追加投資の可能性もありそうだ。

  届け出資料によると、バークシャーは昨年8月24日時点で、伊藤忠商事の発行済み株式の5.02%、三菱商事の5.04%、三井物産の5.03%、住友商事の5.04%、丸紅の5.06%をそれぞれ保有していた。ブルームバーグの試算では、その合計時価総額は6678億円。今月24日までの1年間で保有株の価値は米国の景気回復や資源価格の高騰を背景に3割増の8806億円まで膨らんだ。

     東海東京調査センターのアナリスト、栗原英明氏は、バークシャーの商社株の投資方法については、「ここから活躍する余地があるのに、バリュエーションは安くマーケットは認知していない。さすがにいいところで買うという印象だ」と評価した。5社の純資産倍率(PBR)は上昇したものの、伊藤忠を除く4社は依然1倍割れと、仮に企業が解散しても株主には投資した金額以上が理論上戻ってくるという意味では割安なままであることが示されている。

 

バフェット氏投資の総合商社株
 
 

  バフェット投資を研究しているスパークス・グループの阿部修平社長は、この商社株投資によるリターンについて「下がるよりは上がる方がうれしいと思うが、30%では喜んではいないだろう」と話す。バークシャーの昨年8月の発表資料によると、購入した5大総合商社の株式はそれぞれ長期保有を目的とし、価格次第では最大9.9%まで保有比率を高める可能性がある。一方で、投資先の取締役会からの合意が得られなければ9.9%を超えて取得することはないといい、投資先企業に対して経営戦略などを提案する物言う株主とは一線を画す姿勢を示している。

  阿部氏は、バークシャーは商社が投資している会社に一緒に投資するなど、「最低でもこの投資額の5-10倍の投資をいくつかするような日本投資のプラットホームにしたいのではないか」と推察する。バフェット氏も発表資料で、「5大商社が世界中で多くの合弁事業を手掛けており、こういった取り組みをさらに増やす可能性がある。将来、相互利益の機会が生まれることを期待している」とコメントしていた。

  東証株価指数(TOPIX)の株価収益率(PER)16倍程度に対し、米S&P500種株価指数のPERは27倍程度と米国株には割高感が強まっている。バークシャーは運用金額の増加に見合った大型の投資先を必要としてきているが、米国株の高騰で「バフェット氏は米国で買いたいものがあるか以前ほど確信がなくなっているのではないか」と阿部氏は言う。

    

 

4社のPBRは依然1倍割れ
 
 

 

  TOPIXの年間上昇率は20%台前半と、米S&P500種株価指数の30%台前半を大きく下回る。市場関係者からは、ワクチン接種が進み、新型コロナウイルスの感染問題が落ち着けば、いよいよ日本でも経済正常化に伴い、出遅れた日本株の巻き返しが起きるとの期待の声が聞かれる。

  総合商社を取り巻く環境にいたっては、東海東京センターの栗原氏は、「商社の経営はここ10数年で相当改善している。具体的には商品市況の影響を受けるコア事業比率を下げ、成長分野の2つに分けて試行錯誤してきたが、いよいよ直近決算で結果がでてきた」と指摘。商社株は「流動性もあり割安。一般的に考えている以上の成長力があり、長く持つことによって成功すると思う」と話した。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE