みずほの英トレーダー、役員務めるアドラー合併先の社債売り込み
Jack Sidders、Laura Benitez-
合併プロセス進行中にドイツ不動産開発会社コンサスの社債売り込み
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利益相反の管理指針の規定があり、忠実に順守されていると広報担当
みずほフィナンシャルグループの英現地法人みずほインターナショナルのクレジットデスクは、投資に見合う価値があり価格が下落する余地はほとんどないと請け合い、ドイツの不動産開発会社コンサス・リアル・エステートの社債の売り込みを行った。
コンサスはドイツの不動産会社アドラー・リアル・エステートなど2社と昨年事業統合し、同国の不動産業界最大手の一つ、アドラー・グループが誕生した。
2020年5月の顧客向けリポートは、そうした状況でコンサスの社債が利益を生むはずだとしたが、みずほインターナショナルの欧州・中東・アフリカ(EMEA)クレジットトレーディング責任者クラウス・ヨルゲンセン氏(ロンドン在勤)がアドラー・リアル・エステートの取締役会(監査役会)メンバーである情報は開示していなかった。
みずほは法務担当者が出した文書で、「そのような情報開示を行う必要性はなかった」と説明。アドラーがコンサスの支配権をまだ握っていなかったという要因などを検討後、コンサス債の取引制限を解除したという。
ヨルゲンセン氏は、アドラー・グループの役員会に引き続き籍を置く。ブルームバーグ・ニュースが内容を確認した電子メールによると、コンサスの最大の投資家で、現在はアドラー・グループの筆頭株主アグリゲート・ホールディングスの社債も、みずほインターナショナルのクレジットデスクが内部で売り込んでいた。
事情に詳しい関係者によれば、ヨルゲンセン氏自身も2019年に少なくとも1度コンサス債を顧客に売り込んだ。
みずほの広報担当者は「みずほインターナショナルには利益相反の管理指針の規定があり、忠実に順守されている。アドラー・グループの企業構造の変遷とヨルゲンセン氏の役職に関する認識に基づき、関係する全期間を通じて制限が課されていたとわれわれは考えている」とコメントした。
クレジットと不動産専門のオルタナティブ投資会社フェアウォーター・キャピタルの社員だったヨルゲンセン氏は、18年にアドラー・リアル・エステートの監査役会に入った。フェアウォーターはアドラーの有力投資家の一つだった。
ファンドマネジャーが多額の投資先企業の役員会メンバーになるのは珍しくないが、利益相反の回避で幾つも制限が課される金融機関のトレーダーとなると話は別だ。インサイダー情報の漏えいを防ぐため、トレーダーはアドバイザリー業務とファイアウオールで通常隔離される。
複数の関係者によると、ヨルゲンセン氏が19年に入社した際、みずほはアドラー・リアル・エステートの社債取引を制限する一方、監査役兼務は認めた。みずほの広報担当は「クラウス・ヨルゲンセン氏は個人の資格でアドラー・グループの役員会に現在籍を置いている。この役職は、みずほインターナショナルの同氏の職責とは関わりがない」と回答した。
原題:Mizuho Trader’s Role on Adler’s Board Raises Fresh Questions(抜粋)