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自民党内に日銀の追加利上げは時期尚早との声-年内は困難との見方も

更新日時
  • 中小企業に余力ない、住宅ローン負担増で国民生活に影響-自民議員
  • 7月に利上げできなければ、9、10月は難しい-SBI証・道家氏

円安が急速に進む中、日本銀行の追加利上げ観測に自民党内から時期尚早との声が上がっている。総裁選や年内にも取り沙汰される衆院解散・総選挙などの政治日程を控え、国民生活に不安を与えかねない材料を可能な限り排除したいとの思惑が背景にはある。

  西田昌司参院議員は、7月や9月に追加利上げに踏み切る可能性について「あり得ない」と切り捨てた。中小企業は人手不足を補うための賃金上昇を迫られており、利上げによる借り入れ負担の増加を受け入れる余力がないとも指摘した。岸田文雄政権下では経済の実需を伸ばすことに集中すべきだとし、早期の利上げ観測に不快感を示した。西田氏は党財政政策検討本部長を務めている。

  利上げの是非について聞いた同党議員10人は、住宅ローン金利の引き上げなどを通じて国民生活に直接的な影響が出てくるため時期尚早との懸念を表明。うち6人は政治資金問題に対する選挙区での風当たりは強く、解散・総選挙前に金利が上昇すれば自民党が歴史的な大敗を喫する可能性もあると指摘した。4人は党内の利上げ反対論は、9月の党総裁選前後まで根強く残るとの見方を示した。

  岸田文雄首相の内閣支持率は先週末の一部世論調査で微増したが、3割を切る「危険水域」を脱していない。28日投開票が行われる衆院3補選で唯一、候補者を擁立した島根1区でも自民党は苦戦が報じられている。

内閣支持率は微増も「危険水域」続く、衆院3補選が命運左右の可能性

  岸田首相は衆院解散の時期を明言していない。衆院議員の任期満了は来年10月だが、今年6月までの今国会中や9月の総裁選直後の解散・総選挙の可能性も指摘されている。市場では日米の金利差を受けた円安の進行に焦点が当たる中、自民党内では選挙を控え、住宅ローン金利上昇や中小企業の経営悪化など国民生活への利上げによる弊害が懸念材料となっている。

  SBI証券の道家映二チーフ債券ストラテジストは、自民党総裁選やその後の総選挙の可能性を考慮すると、9月と10月の決定会合での利上げは難しいとみる。特に米大統領選を控えた10月はトランプ前大統領の勝利を見据えて市場が不安定となり、「日銀にとって政治リスクが大きい」と指摘。7月に利上げができなければ、今年は利上げが難しくなると予想する。

  ブルームバーグが12ー17日に実施したエコノミスト調査では、追加利上げの時期を41%が10月会合、19%が7月、17%が9月と予測した。年内に追加利上げに踏み切ると予想するエコノミストが8割に達した。

日銀の年内利上げ予想が8割占める、最多10月は4割に増加-サーベイ

  新藤義孝経済再生担当相は11日のインタビューで、追加利上げについて「何らかの措置が取られるためにはその前提となる条件がそろう必要がある」と述べ、実体経済が十分に強化される前の利上げに否定的な見方を示した。日本は、生産性向上や労働力の流動化を促進して潜在成長力を伸ばす「千載一遇の機会にある」と指摘。この機会を逃さないためにも、「金融政策は適切な判断によって決定される」べきだと述べた。

デフレ脱却宣言、国民が共感する経済の姿を示す必要-新藤経済再生相

(最終段落に11日の新藤経済再生相の記事を追加して更新します)
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