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金融庁が「保有株ウォッシュ」検証へ、持ち合い株式の開示で制度対応も

  • 「純投資」に区分や売る気配なしの疑わしいケースも-新発田参事官
  • 大手損保の削減実行と開示注視、身内に甘い運用会社の姿勢も問題視

金融庁は金融機関などが持つ政策保有株(持ち合い株)に関する情報開示について、実態を正しく反映しているか検証を進める。個別開示の必要がない「純投資」で保有を続ける事例などを問題視しており今後、必要に応じ制度的な対応を検討する。

  上場企業などの情報開示やガバナンスを担当する新発田龍史参事官は、ブルームバーグのインタビューで、「保有株ウォッシュの疑いのあるものもあり、政策保有株を持ち続けていることと違いがないのではという懸念がある」との現状認識を示した。

  金融庁がこうした問題意識を持って検証に乗り出すことで、大量の政策保有株を抱える金融機関をはじめ上場企業などは、保有目的や削減の取り組みについて、より詳細な開示などを求められる可能性がある。

Tatsufumi Shibata
新発田参事官(4月30日・都内)
Source: Bloomberg

  同庁が2023年度に実施した有価証券報告書レビューでは、実際には政策保有株と思われるものを純投資に区分しているケースがあったという。

  新発田氏によると、企業から売却の合意が得られていない保有株を純投資に振り替えていたり、合意は得ているものの、長期間、売る気配が全くなかったりするような事例があった。政策保有株については有価証券報告書に個別銘柄や株数、保有目的などを記載するよう求められている。

  新発田氏は、「政策保有株であったものが純投資に区分されると、保有状況などが開示されなくなり、その後の縮減状況が不透明になるという課題がある」と指摘した。

  一方、政策保有株の個別開示では、保有目的がひな形のような記述で、具体性を欠く例が見られたという。「スタートアップのように(株を)持っていることが決して悪いものではないものもあるはず。ボイラープレート(定型文)で何の説明にもなっていないというのは問題ではないか」と述べた。

  新発田氏は、こうした状況から、24年3月期の有価証券報告書についても、さらに検証していく考えを示し、「実態把握の結果次第では、制度的な対応が必要になるかもしれない」と述べた。 

損保の削減に高い関心

  銀行など金融機関は近年、政策保有株の削減に取り組んできた。大手損害保険会社が今年、企業向け保険の価格調整問題を受け、政策保有株の「ゼロ」を宣言したことで、市場では広い業種にわたる株式持ち合い解消のさらなる加速に期待が高まっている。

  新発田氏は、特に「損保がどのように削減計画を実行して、開示していくのか、非常に関心がある」と述べた。「単に純投資に振り替えておしまいというわけにはいかない。純投資になってからの開示も含め、削減状況をしっかり注視していく」とした。                                            

  国内金融機関の政策保有株の残高は23年3月末で、3メガバンクグループが約10兆円、大手損保4社で6兆2000億円を超える。

  新発田氏は大手金融グループ傘下の資産運用会社にも言及。投資先企業の政策保有株の扱いに対しては厳しいスタンスで臨む一方、自らのグループ金融機関については言及がないことを問題視している。

  同氏は「グループ内の銀行などについて頬かむりするのでは、グループ全体としてインテグリティー(一貫した誠実性)を欠くと言われても仕方がないのでは」と語った。

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