バイデン米政権、港湾のサイバーセキュリティー強化策を発表、中国製クレーンを懸念

(米国、中国)

調査部米州課

2024年02月22日

米国のバイデン政権は2月21日、国内の港湾におけるサイバーセキュリティーを強化する対策を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。本件は、政権がインフラ投資雇用法(IIJA)やインフレ削減法(IRA)を中心に推進する国内投資計画や、重要インフラを含む国家サイバーセキュリティー戦略(2023年3月14日記事参照)の一例だと強調している。

政権の発表によれば、港湾を含む一連の海運に関するインフラを「海運システム(MTS)」と総称し、毎年5兆4,000億ドルに相当する経済活動を支え、3,100万人を超える雇用に貢献し、米国に乗り入れる貨物船舶のほぼ95%が依拠するもので、米国の繁栄に直結する存在だと評価している。その上で、このMTSの運営がデジタル化されるに伴い、複雑なサイバーセキュリティー上の脅威に直面することから、脅威が現実となった場合には、米国経済に甚大な影響が及ぶとの問題意識を示した。その脅威に対処する上で、政権は次の対策を進めるという。

  • 大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにより、国土安全保障省(DHS)にMTSのサイバーセキュリティー課題に直接的に対処する権限を付与する。特に、DHS傘下の沿岸警備隊(USCG)に、MTSへの脅威を示す、またはその疑いのある船舶の航行を制限し、検査を行う権限を与える。
  • USCGを通じて、重要な商業用港湾に配備されている中国製のクレーンに対するサイバーリスク管理対策にかかる指令文書を発表する。MTS運営者はこの指令文書に従い、行動を採る必要がある。2月23日付官報で同指令文書の発表が公示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされている。
  • USCGは、サイバーセキュリティ­ー確保のためにMTSに最低限必要な基準策定を担当する。2月22日付官報で、それに向けたパブリックコメントの募集が公示外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされている。
  • 今後5年間で200億ドル以上を投資し、港湾用クレーンの国内製造能力を信頼できるパートナーと構築していく。具体的な成果として、三井E&Sの米国子会社のパセコ(PACECO)が米国内にクレーン製造拠点の設立を計画している案件を紹介している。

USCGのジョン・バン少将は記者向けブリーフィング外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、米国の港湾に配備されているクレーンの約8割が中国製だと指摘した上で、これらはリモートで操作されることから情報窃取に対して脆弱(ぜいじゃく)性を有していると懸念を示した。今後、そうしたクレーンを総入れ替えするとなれば、同盟・友好国企業には商機となる可能性があり、USCGがどのような指令を出していくか注目だ。

(磯部真一)

(米国、中国)

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