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 印刷 2022年04月04日デイリー版1面

三井E&S、IHIから事業取得へ。舶用大型エンジン、主力分野M&A攻勢

 三井E&Sホールディングス(完全子会社を吸収合併し2023年4月に三井E&Sに社名変更予定)は、主力の舶用エンジン事業で動きを活発化させている。IHIグループが持つ舶用大型エンジン(低速2ストローク)事業の取得に向け協議を開始する。造船事業では、国内建造拠点廃止や常石造船への子会社株一部譲渡などで規模縮小を図る一方、注力分野ではM&A(合併・買収)攻勢をかける。

 三井E&SとIHIは3月31日、IHIグループのIHI原動機の舶用大型エンジン事業とその付随事業を三井E&Sが承継することの協議、検討を開始することで基本合意したと発表した。最終契約書締結は9月、取引実行は23年4月を目指す。

 三井E&Sの舶用エンジンなどを含む機械事業の21年3月期連結売上高は1590億円。舶用大型エンジン分野では、独MANエナジー・ソリューションズからライセンス供与を受け、同社開発の機関を製造している。IHI原動機は、スイスのウィンターツール・ガス・アンド・ディーゼル(WinGD)のライセンシー。三井E&Sは事業取得により、WinGD開発の製品もメニューに加わる。

 IHI原動機は、舶用大型エンジンのほか、小型船向けの4ストローク中速エンジンや、航空機エンジン転用型タービンを主機とする発電プラントのエンジニアリングなどを手掛ける。21年3月期連結売上高は約800億円で、このうち舶用大型エンジン事業は100億円規模とみられる。同事業で製造拠点として相生事業所(兵庫県相生市)を抱えるが、製造拠点の譲渡などについては今後両社で検討する。

 IHIでは、事業環境やポートフォリオ(事業構成)の在り方の検討などを踏まえ、舶用大型エンジン事業に強い三井E&Sに同事業を譲渡することを決めた。

 三井E&Sでは、今回の発表と同時に、優先株と新株予約権を発行することで計167億円を調達することを発表。このうち優先株発行では86億円を確保する。86億円には、「舶用推進システム事業・港湾物流システム事業のグリーン化やデジタルトランスフォーメーション(DX)化に関する研究開発、将来的なM&A・アライアンスなどに関する資金」52億円が含まれており、今回の事業取得で活用される可能性がある。