欧州感染、第1波の3倍 景気二番底の懸念も
新型コロナウイルスの感染者数の拡大が過去最悪のペースになっている。直近で新規感染者数が過去最多を更新した国・地域は49カ国に達した。欧州連合(EU)と英国の新規感染者合計は今春の「第1波」の3倍を超え、景気が二番底を迎える懸念も出てきた。
過去1週間以内に、欧州(ロシア・東欧を含む)の半数以上にあたる35カ国で、新規感染者数(7日移動平均)が最多となった。欧州の多くの国では3~4月が最初の感染のピークで、ロックダウン(都市封鎖)などで一時沈静化したが、感染が再拡大している。英国は18日時点で、今春のピークの3.5倍に感染者が急増。ベルギーでは人口10万人あたりの感染者が70人を超えた。
欧州諸国は夏前にかけて移動制限を相次ぎ緩和し、感染再拡大の一因になった。米グーグルの集計によると6月以降、公共交通機関への人出は欧州でコロナ禍前の8~9割まで戻っていた。
検査の拡充も影響する。アワー・ワールド・イン・データの集計では欧州諸国の検査数が平均約3~4倍に増えた。欧州の1日あたりの新規死者数は5月以降初めて1千人を超え、医療体制への懸念も出ている。
パリでは17日、午後9時以降の夜間外出禁止が始まった。一般にフランスの夕食時間は午後8時前後と遅く、規制前に閉める飲食店もみられた。
経済の見通しは暗い。「景気回復は勢いを失うリスクがある」。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は19日の仏紙インタビューで指摘した。ECBは2020年のユーロ圏の成長率をマイナス8%とみるが「状況が悪化すれば、12月に修正する予想は明らかに暗いものになる」と述べた。
フランスでは国立統計経済研究所(INSEE)が6日、10~12月の成長率予想を従来の前期比1%からゼロに引き下げた。ドイツの主要経済研究所は14日、20年の成長率見通しを春時点のマイナス4.2%からマイナス5.4%に下方修正した。各国政府が描く4~6月が底の急回復シナリオは修正を迫られる。
このままでは再度の都市封鎖も視野に入る。各国は再封鎖を避けたい考えだが、緩い規制で感染拡大が長引けば経済回復はかえって遅れることになる。(西野杏菜、ベルリン=石川潤)
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