微粒子「エクソソーム」の安易な投与、学会が注意喚起
日本再生医療学会は20日、細胞から分泌される微粒子「エクソソーム」を用いた抗加齢効果などをうたう自由診療が拡大しているとして注意喚起した。エクソソームの治療効果は世界でも未実証で、品質管理が不十分だと健康上の問題が起きうると指摘。4月にも安全な臨床応用のための指針をとりまとめるとした。
エクソソームの内部にはたんぱく質やRNA(リボ核酸)が含まれる。体内に投与するとこうした物質が作用して治療効果を得られると期待されている。世界で呼吸不全向けなどの臨床試験(治験)が進むが、効果を実証して実用化した例はまだない。ただ医療保険の適用外となる自由診療で、抗加齢などの効果をうたってエクソソームなどを投与するクリニックが増えている。
学会は20日に新潟市で記者会見を開き、エクソソームを投与しているとみられるクリニックが国内に数百カ所存在すると指摘した。エクソソーム製造時に異物が混入していないかなど安全性の検証がされていない場合、健康上の問題がおきかねないとした。
その上でエクソソームの安全な臨床応用に向けた指針を4月にも発表するとした。製造過程などで生じうる問題をリスト化し、クリアしたものは一定の安全性があると示せるようにする。新潟大学の寺井崇二教授は「エクソソームは今後大きな市場になるとみられる一方、安全性について注意すべき状況にある。指針によって基準を示すのが大事だ」と話した。
細胞などを投与する治療は再生医療等安全性確保法で規制されるが、エクソソームは細胞ではないため対象外だ。学会は2023年11月に厚生労働省の再生医療等評価部会で、エクソソームを国の規制対象にすべきだと提言した。