世界最高強度のX線レーザー、新発見に期待 大阪大など
大阪大学などの研究チームは、X線領域の短い波長を持つ「X線自由電子レーザー(XFEL)」の光を細く絞ることに成功し、従来の100倍以上となる世界最高のX線強度を実現した。これまで観察できなかった物理現象の発見につながる可能性がある。
成果は英科学誌ネイチャー・フォトニクスの電子版に掲載された。XFELはX線とレーザーの性質を併せ持つ光だ。高強度のX線を瞬間的に照射することができ、原子や分子の瞬時の動きが観測できる。国内では兵庫県佐用町の大型放射光施設「SPring-8(スプリング8)」に隣接するXFEL施設「SACLA(さくら)」に光源がある。
XFELを10ナノ(ナノは10億分の1)メートル以下まで集光して強度を高めることができれば、新たな物理現象の観測や分子の構造解析技術の開発につながると期待されていた。既存の方法ではレーザー光が集まる点にわずかなずれが生じ、安定して集光できたのは50ナノメートルまでで、得られる強度にも限界があった。
研究チームはこのずれを抑える新たな集光方法を考案した。その結果、限界値とされる約5ナノメートル四方に迫る7ナノメートル四方までレーザー光を安定して絞れた。このレーザー光を金属のクロムに照射したところ、金属中の電子がほぼ全てなくなるという現象を初めて観測できた。大阪大の山田純平助教は「多くの研究分野への波及効果が期待される」と話す。