菅首相退陣が引き金か SBIが新生銀にTOB 地銀再編急ぐ

SBIホールディングスの北尾吉孝社長(米沢文撮影)
SBIホールディングスの北尾吉孝社長(米沢文撮影)

インターネット金融大手のSBIホールディングス(HD)が9日、新生銀行に対しTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。SBIが全国の地方銀行と連合を組んで実現しようとしている「第4のメガバンク」構想の強化が狙いだ。地銀再編を後押しした菅義偉首相の退陣で、機運が低下する前に実現の道筋を描きたかったのではとの指摘もある。金融庁もSBI主導で新生銀の業績を回復させ、約20年前に投入した公的資金の回収に道筋を付けたい考えがあり、両者の思惑が一致した感がある。

SBIは令和元年9月、島根銀行と資本提携したのを皮切りに、福島銀行や筑邦銀行など、現在までに地方の8銀行と提携。第4のメガバンク構想に向けては10行程度にまで増やす方針で、「その中核組織として、消費者金融などSBIにない強みを持つ新生銀を据える考えではないか」(地方銀行関係者)とされている。

SBIは構想実現に向け新生銀株を買い増し、提携を強化しようと図ったが、新生銀が今年1月に競合するマネックス証券と金融商品仲介業務で包括提携を発表すると関係が悪化した。

これに焦りを見せたのが新生銀に投入した公的資金を回収したい金融庁だ。国が資金注入時に目標とした5千億円を回収するには、新生銀の株価が7500円近くまで上昇する必要があるとされ、現在の株価の1400円程度との乖離(かいり)は大きい。仮にSBIが新生銀の大株主として経営改善に乗り出し、企業価値の改善で早期回収を促せるなら、〝渡りに船〟になると期待していたからだ。

銀行株式の20%以上を取得して主要株主になる場合は、銀行法の規定で金融庁の事前認可を取る必要がある。SBIはTOBを発表した9日付で認可を得たと説明しており、金融庁に事前了解を得たとみられる。

SBIの北尾吉孝社長は首相のブレーンとして知られ、第4のメガバンク構想は政権が力を入れた地銀再編の先兵だ。急転直下の退陣表明は構想実現の逆風になりかねず、「新政権誕生前に子会社化を急いだのでは」(大手銀関係者)との見方もある。(西村利也)

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