ウクライナ軍総司令官、苦戦認める 「ロシア軍が複数方面で戦術的成功」

会合に臨むウクライナ軍のシルスキー総司令官(手前)=10日、キーウ(ロイター=共同)
会合に臨むウクライナ軍のシルスキー総司令官(手前)=10日、キーウ(ロイター=共同)

ロシアによるウクライナ侵略で、ウクライナ軍のシルスキー総司令官は28日、「露軍があらゆる前線で活発な攻勢を展開し、いくつかの方面で戦術的成功を収めている」とSNS(交流サイト)で発表し、自軍の苦戦を認めた。同氏は「過去1週間、各前線で激戦が続き、戦局は劇的に動いている」とも述べた。

米シンクタンク「戦争研究所」は25日、「米国の軍事支援が到着してウクライナ軍が戦力を回復させる前に、露軍が攻勢に出ている」と分析。シルスキー氏の発表はこれを裏付けた形だ。

シルスキー氏は、東部ドネツク州アブデーフカの北西方面が「最も困難な状況」にあるとし、この方面でウクライナ軍が後退していることを認めた。一方で、露軍のさらなる前進を防ぐために損耗した部隊の交代を進めていると説明した。

シルスキー氏は、現在の最大の焦点となっているドネツク州チャソフヤル方面も「激戦地のままだ」と述べた。チャソフヤルは、ウクライナ側が保持する同州の主要都市クラマトルスクやスラビャンスクを守る防衛線の一角。露軍がチャソフヤルを制圧した場合、主目標とするドネツク州全域の制圧に近づく。

シルスキー氏は、東部ハリコフ州や南部ザポロジエ州の戦況も緊迫しているものの、両方面では露軍に目立った前進を許していないとした。

ウクライナは現在、米軍事支援や今後の追加動員で戦力を回復させ、将来的な反撃につなげたい構えだ。ただ、専門家の間では、ウクライナはこれらの措置で劣勢を相当程度解消できるものの、優勢を得るまでには至らないとの見方が強い。

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