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 総務省は企業などの社印や組織印の電子版になる「eシール」の認定制度を創設し、2024年度中に運用を開始する。複数の認定eシールサービス提供事業者が登場する見込みだ。

 eシールは電子文書の発行元に誤りがないことを証明し、内容も改ざんされてないことを確認できる仕組み。企業などが請求書や領収書、保証書などを電子化して人手を介さずeシールを付与して顧客に送付したり、大学などの教育機関が卒業証明書にeシールを付与してオンラインで卒業生に自動発行したりできる。

 eシールは発行元となる組織にひも付く。eシールが付与された電子文書は公開鍵暗号基盤を利用しているため、第三者に渡っても改変できない。個人の意思表示を証明する電子署名とは異なるので、組織内の人事異動などによって担当者が代わるたびにサービス提供事業者に電子証明書を再発行してもらう手間もない。物理的な紙を保管するコストや紛失のリスクも減らせる。

 欧州連合(EU)は域内各国に適用する法制度でeシールの法的有効性の要件を定めている。しかし日本では国による信頼性の裏付けがなかったことから、eシールの導入を見合わせる企業も多かった。

 このため政府は総務大臣による認定制度を創設する。認定によって高い保証レベルと位置づけられる「レベル2」と、大臣認定がなく簡易な手続きにより低コストで大量発行できる「レベル1」の2段階を設ける。

 ただし認定制度を創設しても民間による自主的な仕組みは妨げない。既にブロックチェーン技術を使ってeシールと同様の機能を提供するサービスも登場しており、技術中立性の観点から排除しないとしている。企業などが使い分けてeシールの活用を促すのが狙いだ。

eシールの保証レベルとユースケースのイメージ(今後法令や制度改正などによって変更の可能性がある)
eシールの保証レベルとユースケースのイメージ(今後法令や制度改正などによって変更の可能性がある)
(出所:総務省)
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海外との相互運用を視野に指針改正

 総務省は有識者会議の議論を踏まえ、eシール認定制度の創設を盛り込んだ「最終取りまとめ」を2024年3月に公表した。eシールの技術や運用などの基準を定めた2021年6月の「eシールに係る指針」を改正し、2024年度中に総務省告示を制定する。併せて認定制度の実施要項を策定し、運用を開始する。

 認定の有効期間は2年とする。認定に当たって総務大臣は、サービス提供事業者が信頼性を評価する基準などに適合しているかを審査する業務の一部を指定調査機関に行わせる。指定調査機関は今後決める。