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 音楽CDが普及する前の世代であれば、カセットテープを知っているだろう。様々な曲をカセットテープに録音して、音楽を楽しんだ経験がある人は多いはずだ。カセットテープに録音した音楽やラジオ番組などを今でも大切に保管している人もいるだろう。

 最近はカセットテープの独特な音質が愛好家らの支持を受けており、一部で再評価されている。レディー・ガガ氏や山下達郎氏といった著名アーティストもカセットテープで楽曲を販売している。また1970年代から1980年代の文化を好むZ世代にもカセットテープは人気のようだ。原宿や下北沢、渋谷などの雑貨店では、カセットテープを見かけることがある。

 カセットテープはテープ表面に磁性体と呼ぶ磁気を帯びた粉を塗布しており、その極性を録音ヘッドで変化させて音声信号を記録する。磁気を使う仕組みなので、周囲に磁気があると劣化しやすい。また高温多湿の場所に保管していると、テープにカビが生えたり、経年劣化で伸びたりして、まともに再生できなくなる。

 大切な音源を記録したカセットテープならば、正常に再生できるうちにアナログ音源から劣化しないデジタル音源に変換しておきたい――。こうした需要に応える画期的な製品がサンコーから発売された。それが「ローファイを楽しむ80'sカセットプレイヤー」だ。携帯カセットテーププレーヤーであり、カセットテープに録音された音源をデジタル化する機能を備える。この製品の注目度は高く、2023年7月末に販売開始後、すぐに完売。2023年10月以降の再販を予定しているという。筆者はサンコーから製品を貸し出してもらったので、レビューをお届けしたい。

サンコーの「ローファイを楽しむ80'sカセットプレイヤー」はカセットテープに録音された音源をデジタル化する機能を備える携帯プレーヤー。実売価格は4980円(税込み)
サンコーの「ローファイを楽しむ80'sカセットプレイヤー」はカセットテープに録音された音源をデジタル化する機能を備える携帯プレーヤー。実売価格は4980円(税込み)
(写真:スタジオキャスパー)
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昭和のカセットテーププレーヤーを思い出す外観

 ローファイを楽しむ80'sカセットプレイヤー本体の大きさは幅116×奥行き30×高さ90mm。重さは約200gだ。角張った外観は、1980年代の昭和後期に一世を風靡したソニーの「ウォークマン」の初代モデルに少し似ている。外装の素材は樹脂だが、表面に光沢があるので安っぽさを感じない。現在普及する音楽プレーヤーと比較すると大きいが、カセットプレーヤーとしては小さく感じた。ズボンのポケットやスーツの胸ポケットに何とか入る大きさだ。

 カセットテープを挿入するには、サイドのスイッチを横に動かすとカバーが開くので、上下の向きを合わせてセットするだけでよい。カセットテープを取り出す際はカセットテープの側面を持ち、つまんで持ち上げる。

ノーマルカセットのみ対応。カセットテープを挿入する際にはサイドのスライドスイッチでカバーを開く
ノーマルカセットのみ対応。カセットテープを挿入する際にはサイドのスライドスイッチでカバーを開く
(写真:スタジオキャスパー)
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 カセットテープには、ハイポジテープやメタルテープなどノーマルテープとは記録方法が異なる種類もあるが、対応するのはノーマルテープのみである。ノーマルテープ以外の再生やデジタル化を考えているなら注意したい。また60分以下のテープの再生を推奨している。90分以上のカセットテープはテープが薄く、巻き込まれる危険性があると警告している。カセットテープへの録音機能はない。

 本体上部には「再生」「停止」「早送り」「巻き戻し」など、各種操作ボタンを備える。各ボタンは高さがあるので奥深く押す必要があり、古いカセットテーププレーヤーの雰囲気を味わえる。再生ボタンのみ幅が広いので、目視しなくても押しやすかった。

上部ボタンを操作してカセットテープの再生や停止、早送り、巻き戻しができる。オートリバースはA面からB面を1回再生、または繰り返し再生を選べる。再生中にリバーススイッチを押すと、A面とB面の再生を切り替える
上部ボタンを操作してカセットテープの再生や停止、早送り、巻き戻しができる。オートリバースはA面からB面を1回再生、または繰り返し再生を選べる。再生中にリバーススイッチを押すと、A面とB面の再生を切り替える
(写真:スタジオキャスパー)
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 再生する際はオートリバース機能を使える。A面からB面への折り返し再生や、A面からB面、B面からA面と再生を繰り返す自動リピートを選べる。A面を再生している途中でB面を再生するには、「DIR」の刻印がある小さなリバーススイッチを押す。これで再生方向が変わる。ただし高機能なカセットテーププレーヤーに備わっていた曲間の無音部分を検出し、曲の頭出しをしてから再生するような機能はなかった。

 電源はUSBケーブルによる電源端子への給電か乾電池を選べる。乾電池ならば単3型乾電池2本が必要。アルカリ電池なら4時間ほど動作するという。電源スイッチはなく、USBケーブルか単3型乾電池のどちらかを挿入後、カセットテープを入れて再生ボタンを押すと、すぐに音源が再生される。

背面のカバーを開けて単3型乾電池2本を入れれば、外出時にも利用できる。アルカリ電池であれば約4時間動作するという
背面のカバーを開けて単3型乾電池2本を入れれば、外出時にも利用できる。アルカリ電池であれば約4時間動作するという
(写真:スタジオキャスパー)
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USBの電源ケーブルが付属する。パソコンのUSB端子やモバイルバッテリーからの給電でも動作する
USBの電源ケーブルが付属する。パソコンのUSB端子やモバイルバッテリーからの給電でも動作する
(写真:スタジオキャスパー)
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 音源の出力は、イヤホン端子による出力のみだ。イヤホンは別売りだが、本体に備わっているイヤホン端子は、一般的に使われているミニピンジャックである。スマートフォンや携帯音楽プレーヤーなどのイヤホンをそのまま流用できるだろう。