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 ロームといえば日本を代表する電子デバイス企業の雄だ。高い技術力を背景に高収益を維持しているイメージが強い。ところが、今回の日本市場における株高からは完全に乗り遅れた。2023年10月ごろから日経平均株価も東証株価指数(TOPIX)も上昇を続ける中、ロームの株価は下落基調が続いている。

 確かに、2023年11月1日には2024年3月期第2四半期(累計)実績値が予想値を下回り、同時に2024年3月期の業績予想を下方修正した。さらに、2024年2月1日には再び業績予想を下方修正したことが嫌気された可能性は否めない。

 ただ、ロームの主力であるパワー半導体などの世界的な需要は将来的には成長が見込まれており、ここまでアンダーパフォームすることには違和感もある。

ロームの株価と日経平均、TOPIX
ロームの株価と日経平均、TOPIX
2023年4月1日を1とした。(出所:Quickのデータに基づき日本知財総合研究所が作成)
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悪いことが重なった2023年度

 まずは需要の急ブレーキだ。ロームの2021年度と2022年度の業績は確かに出来過ぎだったかもしれない。世界的な省エネルギー化や自動化・デジタル化に必要なパワー・アナログ半導体需要が急拡大し、円安も手伝って、特に2022年度の業績は絶好調だった。

 もともと2023年度は円安の効果が剥落することもあり、売上高は当初、+6%程度の伸びを予想していた。ところが、パワー・アナログ半導体の在庫調整が予想以上に本格化し、売上高が失速した。ある意味、2022年度の反動が出た形となった。

ロームの業績推移
ロームの業績推移
(出所:ロームのIR資料に基づき日本知財総合研究所が作成)
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 次は減価償却費負担の急増だ。ロームはこれまで設備投資負担が比較的小さく、その中で高い利益を稼ぎ出す高総資産利益率(ROA)企業だった。それが、ここに来てLSIも半導体素子も、共に将来的な需要に対応するための設備投資が急増した結果、減価償却負担が大幅に増えている。これが業績を圧迫し、大幅な減益につながった。

ロームの設備投資額の推移
ロームの設備投資額の推移
(出所:ロームのIR資料に基づき日本知財総合研究所が作成)
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 最後に、東芝への出資のための資金調達も株価にはマイナス材料となった。ロームは2023年9月にTOB(株式公開買い付け)が成立した東芝の非公開化に際して3000億円を出資したが、その際、投資資金は全額借入金で賄った。2024年4月8日にはユーロ円建ての新株予約権付社債(転換社債=CB)を発行し、2000億円を調達すると公表。負債返済圧力の軽減は図れたが、一方で、希薄化を招いた。

 東芝とは2024年3月29日には半導体事業において業務提携強化に向けた協議開始を始めている。ただ、この収益貢献は現時点では不確実性が残り、希薄化が悪材料となったのだろう。